Covid-19の感染拡大による個展中止のお知らせ

【「旅する椅子」小西朝子展・中止のお知らせ】

パリでの個展は本来なら2020年4月15日からでしたが、ご存じのように、パリではCovid-19の感染拡大でそれどころでなく、やむなく中止を決定いたしました。 
パリ中心部にある展示会場の回廊は広い空間で「旅する椅子」の写真作品120点近くをテーマ別にわけて展示をする予定で、個展に向けてずっと缶詰めで準備してきました。
まさかこのような事になるとは、とても残念に思っています。

また、開催場所であったパリ市の文化財である中世の回廊は、教会部分と共に今年7月から2年間の改修工事にはいる予定であるため、2022年に延期という状態です。
ですが、新型コロナウィルスの感染拡大により予定通り7月から工事が始まるかどうかわからず、先の見通しが立たない状況です。

今回のこの個展のために、日本から母や親戚や知人がパリに来る予定で、フライトやアパルトマン等の手配、レストランなどの予約も、旅の計画をすべて私が担当していましたので、その想定外のキャンセルや返金交渉にも時間がかかりました。
ヨーロッパを主体にアパルトマンを紹介している会社では、現金での全額返金とはならず、有効期限付きの同額クーポンを発行する、という補償だけでの対応となってしまい、この先の見通しのない現状においては本当にまた旅が出来るのかどうか不安です。

新型コロナウイルスについては、すでに、1月下旬にパリに行く時に、羽田空港にあふれるマスク姿の中国人観光客達をみて、日本はずいぶんのんびりしている、と危機感のなさに心配になっていましたが、まさかヨーロッパがパンデミックの中心になり、このようなロックダウン(都市封鎖)が起こるとは、思いもしていませんでした。

もちろん、少しは感染の被害はあるとは思っていましたが、いまだに終息の見通しも立たないほどの状態になるとは予想だにしていませんでした。
パリでは3月上旬頃から100人以上の集まる催しは禁止になり、その時点で個展を断念せざるを得ない状況でした。

その後カフェやレストランも閉まり、外出禁止令もでて、日本からの渡航禁止となってフライトの運行休止と空港が閉鎖されれば、当分(9月ぐらいまで)帰国できなくなると思いまして、急遽、3月28日のANAの最終便で帰国した次第です。(その直後、直航便はすべて運休になりました)

羽田空港ではPCR検査があり、公共交通機関は使えないので母に自家用車で迎えに来てもらって、14日間の自宅待機が12日に終わり、PCR検査の結果は陰性でした。

パリのアトリエは窓が大きく空がよくみえるので、外出禁止令がでてから空や空気がとたんに綺麗になったのが分かりました。 
これからは世界全体でよりいっそう環境汚染について考えなければダメだと、自然をリスペクトして共存して生きるという意識を持たないと、人間は自分で自分の首をしめることになります。

敷地が広く中庭に面しているのでとても静かで(鳥の声がよく聞こえる)、創作には良い環境なので、パリにいれば制作に励むことができるのですが、なんといっても日本にいる母と5匹の猫が心配で、心配していると精神的に良くないので、近くにいるために帰国しました。
日本も切迫した状態ではありますが、何があっても家族と一緒にいる方が良いと思っています。
いつかまた違う形での個展を考える予定ですが、Covid-19の終息の見通しがみえるまで、落ち着かない日々となりそうです。

2020.04.15記






写真 : 展示予定であった写真作品の一つ「旅する椅子, パリ, 2018」
Photo: 「La Chaise Voyageuse, Paris, 2018」
©️Uran-AsakoK.


そういえば、以前、「旅する椅子」の作品写真には人の姿がない、と言われた事がありましたが、この写真もまるでロックダウン(都市閉鎖)した現在(2020年3~4月)のパリのようです。
2018年に撮った写真で、まだノートル・ダムが焼け落ちる以前の姿。まさかロックダウンし外出禁止令がでて、パリの街から人が消える、とは思ってもいなかった2018年に撮った写真。 
それはまるで予言のように、人がうつっていないのです。
私は以前から人がいなければ良いのに、と多すぎる人混みが大嫌いで、人間が環境を壊し続けている、と思っていたのです。
人がいない瞬間、一瞬を狙って写真を撮ってきたのでした。



Photos©︎Uran-AsakoK.
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