コラージュ創始者・ピカソから学ぶ現代絵画技法 —砂を使った表現— 定期講座「新しい表現にチャレンジ〜コラージュ・抽象画〜」

定期講座では、今期(春期)の前半4月23日〜5月28日まで、以下のような”ピカソの砂を使った表現”をやっています。 

題名:
コラージュ創始者・ピカソから学ぶ現代絵画技法
コラージュにチャレンジ! 

—砂を使った表現—
内容:
絵画におけるコラージュはキュビズム時代にパブロ・ピカソが始めたパピエ・コレに端を発するといわれています。 そのピカソのコラージュ技法は、様々なバリエーションによる広がりがあり、その中から遊び心溢れる「砂を使ったコラージュの表現技法」をアレンジ模写していきます。

1回目(4月23日): コラージュ創始者、パブロ・ピカソ(PABLO・PICASSO)の砂を使ったコラージュ技法をスライド鑑賞をしながらご案内&ご説明。 2回目以降の材料についても1回目にご説明。
2回目(4月30日): 実技   材料・技法の紹介と実践 
3回目(5月14日): 実技 
4回目(5月28日): 実技   仕上げ 講評会(毎回講評あり)
計4回

材料:
支持体・キャンバス(裏を使用)。ゴム手袋、ボール紙、厚紙、エアーパッキング、布、ひも等、日用品から用意。  
速乾性木工用ボンド(コニシボンド)、スプレーのり、砂(目の細かいもの・自然の色であることが大事)、セメント、ボロ布。

講師: 小西朝子(コニシアサコ・美術家・日本美術家連盟会員)
場所: NHK学園くにたちオープンスクール
HP、絵画(洋)に掲載↓
http://www.n-gaku.jp/lifelong-school/kunitachi02/#header




砂を使った表現のピカソ作品
ピカソ美術館(パリ)で私が撮ってきた作品


























今回は上のピカソ作品4点の中から受講生に好きな作品を選んで頂き、アレンジ模写します。 アレンジ模写の後は、応用してオリジナル作品を制作。
今、3回目(5月14日)が終わったところで、砂を画面につけていく作業をしました。
2回の実技で完成された受講生もいます。以下、過程と完成作品を掲載。

制作過程 ↓


実技1回目
今回はキャンバスの裏を支持体につかいます
この写真は、手の部分をゴム手袋で作成し
それを支持体につけているところ
ゴム手袋の中には梱包材や針金などを入れて
形を整えます



こちらは、ダンボール紙など厚紙に形を描き
切り取って画面につけていくところ



こちらの受講生Yさんは、模写ではなく
完全オリジナルで制作
色々な場所で拾い集めてきた物や自分で作った
人形などをはりつけています
物の大きさに大小があり、凹凸にもコントラスト
があること、具象的なイメージの物が抽象的な
形の中にあること、が大事です
そういった課題をクリアしたので、これに砂を
つけていきました
この状態では面白味がありませんが、砂をつけ
ることでこのように↓↓↓なりました
(下の作品)


⬇︎↓↓↓⬇︎



受講生 T.Yさん  完成作品
砂をつけることで、とても面白味のある
イメージが広がる作品になりました



上作品の制作過程はこちら⬇︎




ビックサイズのビニール袋(透明のゴミ袋)の
中に作品を置きます。
これは周りにスプレーのりや砂が飛び散るのを

防ぐため&砂を再利用するためです。
スプレーのりを画面のはじから少しずつかけて
いきます。(マスクを使用) 

全体に一気にかけずにはじから少しずつ
スプレーのり → 砂 → スプレーのり → 砂
といった具合に、やっていきます。
砂は隙間まで入り込むように、多めにかけて
いきます。




全体的にスプレーのり&砂かけを繰り返し
3分ぐらい置いたら作品を立てて作品の裏を
指でうち、余分な砂をビニール袋の中に落と
していきます
(落とした砂は後で再利用します)
砂がもう取れない、というまで、作品を回し
ながら、後ろを叩いて砂をとります
ついていない部分にまたスプレーのりをかけて
砂をつけていきます
何回かこれを繰り返し、完全に固着したかな、と
いう状態になったら、柔らかい刷毛で表面の砂を
とっていきます
刷毛でとることによって、砂が厚く付きすぎなく

なります



まだ右側木枠の部分に少し砂がついていないようです



全体的に砂がつき、いい感じにできました



受講生Yさん 完成作品





受講生Sさん 制作過程
ビニール袋の中でスプレーのりをかけているところ
スプレーのりは強力なものが良いです







プラスチックのスプーンで少しづつ砂を
振りながらかけていきます
コツは、砂をドバッと一箇所にかけずに
”砂を振りながら” です








柔らかい刷毛で余分な砂を落としているところ



全体的に砂が付いたところ
こちらの受講生Sさんはセメントと砂を混ぜて
使用。セメントは細かいので微妙な表現に敵し
ています。さすが、Sさん!




受講生Sさん 完成作品
ピカソ作品と比べると手の腕の部分の長さが
足りないため、動きが足りない感じがするので
ダイナミックな動きがでるように、手の向きを
少し上にもちあげると良いようです。
ですが、初めて制作されたにしてはとても良く
出来ました。




受講生Aさん 制作過程
持参された砂の色が少々濃く目が荒い
感じがしましたので、他の受講生で明
るく目の細かい砂を使っている人から
分けてもらい、かけていったところ、
良くなっていきました









受講生Aさん 完成作品
全体のバランスが良く、とても良い感じに
出来上がりました





受講生Fさん 制作過程
やはり持参された砂の色が濃く、目が荒すぎ
たので、他の受講生が持参された細かい粒子
のセメントをおかりし、上からつけたところ
形態が浮かび上がってきて、とても良くなり
ました。
凹凸が少ないこのような作品には、特に、砂
の目が細いことが必須条件ということが分か
りました。
ピカソの作品でも、このような平面的な作品
では、上から明るい砂を足して、浮かび上が
らせていることが分かります。




受講生Fさん 完成作品
平面的な作品ですが、形態が綺麗に浮かび
あがっています





Photos©︎Uran-AsakoK.
Uran-AsakoK.©droits réservés



短期講座「ピエール・アレシンスキーの作品をアレンジ模写!」 2回目

NHK学園くにたちオープンスクールにて、「ピエール・アレシンスキーの作品をアレンジ模写!」5月18日、2回目は、実際にアレシンスキーの作品をアレンジ模写しました。
アレンジなので、まったく同じように模写をする必要はないのですが、アレシンスキー作品の特徴的な部分をとらえるのが大事です。
支持体であるキャンバスにはられたアンティークのハガキもアレシンスキー作品とはサイズやハガキも書かれた文字も違うので、その支持体に合わせてどの部分をとりだして入れるか、を考えなければなりません。
そしてまず、アレシンスキー作品の特徴は、作品の一部であるワクの線。
ワクの線が特徴で、漫画のコマ割りのような作品でも、ワクの線が効果的で、印象的です。
点線のような線からジグザグのように入っているもの、有刺鉄線のようなもの、レースのように見えるもの、など形も様々で、どこにどのように入っているのか、また自分の支持体にはどのように入れるのがいいか、などアレシンスキー作品をよく見て感じをとらえることが大切です。
それと、下書きなしで描くことが大事なので、いきなり本番でいきます。
簡単な”あたり”ぐらいならいいのですが、下書きをしすぎると、線や表現が硬くなり勢いがなくなります。
そっくりに描くことよりも、のびやかさがあるかどうか、が大事なのです。
今回のアレンジ模写では、皆様違うものが出来、面白い作品ができました。
違うというのも良いことです。人間は百人百様、十人十色ですから、違って当たり前、アレンジ模写ではその人らしさがにじみでているものが成功なのです。




受講生の制作中の様子







今回アレンジ模写したアレシンスキー作品はこちら 
昔の郵便物に水彩で描かれた作品です
顔の部分だけとり出しました
ピエール・アレシンスキー「あなたの従僕」
1980年 水彩、郵便物(1829年12月17日の消印)



ご用意した支持体はこちら
私がフランスの蚤の市で見つけた昔のハガキを
拡大コピーしてキャンバス(FSM号)にはったものです



受講生完成作品









この作品はアレシンスキーの作品の顔とはまったく
違いますが、お地蔵さまのような表情が味があり
周りの点線のような枠取りがアクセントになり、色
もいい感じです
アレンジ模写ですから違っていても作品として成り
立てばいいのです



















2作目も仕上がりました



赤と緑の線の色が下のハガキの文字
と線の色と合い、まけていません




このアレンジ模写も受講生によるこの日の2作目
支持体のハガキの文字やスタンプが生かされて、
墨汁で描かれた線画の表現がとてもよくあっていて
アレンジ模写による面白い作品ができました







Photos©︎Uran-AsakoK.
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短期講座「ピエール・アレシンスキーの作品をアレンジ模写!」 について

NHK学園くにたちオープンスクールでは、定期講座「新しい造形表現にチャレンジーコラージュ・抽象画」という講座を私は随分前からやっていますが、定期講座だけでなく、今回5・6月と短期講座「ピエール・アレシンスキーの作品をアレンジ模写!」という5回で終わる特別講座があり、はじまったところです。

NHK学園くにたちオープンスクールのHP↓
http://www.n-gaku.jp/lifelong-school/kunitachi02/

先日5月11日が初日で、今もなおフランスで活躍している90歳で現役アーティストのピエール・アレシンスキー(ベルギー出身)について、スライド鑑賞と共にご紹介しました。
スライドでは、昨年渋谷のBunkamuraで初の回顧展が開催された時に学芸員の方による作品紹介と他の方のレクチャーの画像があり、それをお見せしたり、私がパリで撮ってきた動画などもお見せしました。
アレシンスキーは、日本との関わりが深く、書家との交流があり、そしてその交流や日本滞在以後どのように作品が変化していったか、など過程についてもご説明しましたが、また二回目以降に実技をしながら具体的な作品をお見せしご案内していく予定です。
今回ご受講された方の中には、初めてアレシンスキーというアーティストを知り、昨年日本で開催された初回顧展を知らなかったので観られなくて残念だった!とおっしゃっている方がいましたが、知れば知るほど興味深いので、実際に作品をみたいと思うのは当然です。
日本では初回顧展ですが、ヨーロッパでは知名度が高く、パリの主要な美術館には作品が収蔵展示されてあり、パリにあるフランス国民議会にもアレシンスキーの作品による円形踊り場があります。また、先の投稿でご紹介したデカルト通りにも大きく印象的な壁画があり、世界的に評価が高いベルギー出身アーティストなのですが、日本ではなぜか展覧会が開催されてなく知名度が低いのが残念なのです。 
以前から日本でアレシンスキーを紹介する機会がもっとあればいいのに、と思っていたので、定期講座では初回顧展のずっと前に、アレシンスキーをご紹介したことがあります。パリから画集を持ち帰り、少ない参考資料の中、模写からはじまって応用編まで、受講生の皆様もとても興味を持って取り組まれましたので、いつもより長めにやり、その成果は十分に作品に表れていました。 

だいぶ以前(数十年前)、パリのポンピドゥーセンターで初めてあのマンガのコマ割のような画面(それもかなり大きな作品)をみた時は、なんて面白い作品だろうと、時間をかけてじっくりとみた記憶があります。 
描かれた線による形は、具象的なイメージのようでありながら、抽象的でもあり、意味がありそうでなさそうな形態でもあり、だからこそとても面白く、また、その線がのびのびとしていて自由な感じで、黒色が印象的で懐かしい感じもし、これはとても才能のあるアーティストによる素晴らしい作品だな、と思ったのです。
それ以後、アレシンスキーの作品をパリの美術館で見かける度にみてきて、一時期、私もパリで版画をやっていたので、パリの版画工房や画廊でアレシンスキーの版画を沢山みる機会があり(切手もあるのです)、その時に、詩とコラボレーションしたものや文字との関わりの作品をみて、ますます興味深く思っていました。
私は昔からよく言葉との関わりが深い作品に注目するのですが、自分にも言葉に対する思い入れがあるからかもしれません。 亡父がフランス文学者で、子どもの頃からボードレールやジャン・ジュネの詩やサン・デグジュペリやサルトルについて父が語ることを聞いていた、という事も関係するかもしれません。それに、そういった作家達の詩を実際に私の個展時に私の作品と共に並べた事もあります。父が私の作品にあう詩などを抜粋して選んでくれていたのですが、それは作品をみる人にイメージをより良い方向に広げる役目をしてくれ、とても効果的なコラボレーションだったのです。
そんな事もあり、今回アレシンスキー作品でとりあげたのは、言葉が書かれたハガキや古い手紙を支持体として、その上に描かれているという斬新な表現の作品。
1800年代や1900年初めのアンティークの古いハガキは、蚤の市で手に入れられるのですが、無名の普通の人が出したハガキが売られている、という事実も日本人の方達で知らない人もいるのではないか、と思います。
手紙やハガキだけではなく、書かれた請求書、領収書といったものまで、蚤の市では売られています。 ただ、最近は蚤の市の中でも観光客があまり行かない場所を探さないとありませんが。
アレシンスキーは、フランスの蚤の市で古いハガキや請求書などを束で買ってきた事があり、それに絵を描いているのです。
それは、内容に関係があるような画もあれば、関係なく文字やスタンプや切手を造形としてみて、その形を利用して描かれた作品もあります。
私は以前、サルトルの本に父が線を引いたり文字を書き込んだ部分だけを抜き出してコラージュした作品をつくった事があります。 また古い手紙やハガキにもとても興味があり、蚤の市でよく買っていたので、そのアレシンスキーの作品には何かとても共感するところがあったのです。
蚤の市、というのも、実は私は子ども時代からの思い入れがあります。 母が48〜50年前にパリに滞在していた時にパリの蚤の市に毎週行き買ってきた骨董品が、日本の家に溢れていて、そんな環境で私は生まれ育ったからです。 母からパリの蚤の市の話しを何度も繰り返し聞きながら、ヨーロッパのアンティークをみたり使ったりしながら育ったので、初めてパリの蚤の市に行った時には特別な想いと共に懐かしい感じがしました。
蚤の市に行くと、使われてきた物が沢山売られていて、その使われてきた年月と歴史がその物達の表面にそのまま味わい深くあらわれているのです。

古いハガキというのは、出した人の想い、受け取った人の想いが詰まっているものです。
そんなものを支持体として使い、書かれている文字を意味ではなく造形としてみて、絵を描いたり、コラージュしたりして作品にする、という事はなんて面白いことでしょうか。
その面白さを感じてみてほしい、というのが今回の短期講座を企画した思いです。



Bunkamuraでの初回顧展時に開催された
レクチャー等をスライドで紹介







アレシンスキーの画集
CoBrAコブラ のアーティストをまとめた画集は
今年の4月にパリ市立近代美術館で開催された
カレル・アペルの展覧会で手に入れたもの








左のプチイーゼルにかかっているのが
今回の講座のために私が作成しご用意した支持体
キャンバスに私がパリの蚤の市で買ってきた
アンティークのハガキを拡大したものをはってあります









種類も色々、たくさんご用意しました




色々なハガキや封筒&手紙や請求書など
パリのクリニャンクールの蚤の市で手に入れたもの




私がアレシンスキーの作品をアレンジ模写した作品
手前はその支持体として使用した実際のハガキ



1800年代の昔の請求書は手書き文字も味があります









私がアレンジ模写した作品は
NHK学園くにたちオープンスクールの受付に
説明と共に置いてあります








Photos©︎Uran-AsakoK.
Uran-AsakoK.©droits réservés