短期講座「ピエール・アレシンスキーの作品をアレンジ模写!」 について

NHK学園くにたちオープンスクールでは、定期講座「新しい造形表現にチャレンジーコラージュ・抽象画」という講座を私は随分前からやっていますが、定期講座だけでなく、今回5・6月と短期講座「ピエール・アレシンスキーの作品をアレンジ模写!」という5回で終わる特別講座があり、はじまったところです。

NHK学園くにたちオープンスクールのHP↓
http://www.n-gaku.jp/lifelong-school/kunitachi02/

先日5月11日が初日で、今もなおフランスで活躍している90歳で現役アーティストのピエール・アレシンスキー(ベルギー出身)について、スライド鑑賞と共にご紹介しました。
スライドでは、昨年渋谷のBunkamuraで初の回顧展が開催された時に学芸員の方による作品紹介と他の方のレクチャーの画像があり、それをお見せしたり、私がパリで撮ってきた動画などもお見せしました。
アレシンスキーは、日本との関わりが深く、書家との交流があり、そしてその交流や日本滞在以後どのように作品が変化していったか、など過程についてもご説明しましたが、また二回目以降に実技をしながら具体的な作品をお見せしご案内していく予定です。
今回ご受講された方の中には、初めてアレシンスキーというアーティストを知り、昨年日本で開催された初回顧展を知らなかったので観られなくて残念だった!とおっしゃっている方がいましたが、知れば知るほど興味深いので、実際に作品をみたいと思うのは当然です。
日本では初回顧展ですが、ヨーロッパでは知名度が高く、パリの主要な美術館には作品が収蔵展示されてあり、パリにあるフランス国民議会にもアレシンスキーの作品による円形踊り場があります。また、先の投稿でご紹介したデカルト通りにも大きく印象的な壁画があり、世界的に評価が高いベルギー出身アーティストなのですが、日本ではなぜか展覧会が開催されてなく知名度が低いのが残念なのです。 
以前から日本でアレシンスキーを紹介する機会がもっとあればいいのに、と思っていたので、定期講座では初回顧展のずっと前に、アレシンスキーをご紹介したことがあります。パリから画集を持ち帰り、少ない参考資料の中、模写からはじまって応用編まで、受講生の皆様もとても興味を持って取り組まれましたので、いつもより長めにやり、その成果は十分に作品に表れていました。 

だいぶ以前(数十年前)、パリのポンピドゥーセンターで初めてあのマンガのコマ割のような画面(それもかなり大きな作品)をみた時は、なんて面白い作品だろうと、時間をかけてじっくりとみた記憶があります。 
描かれた線による形は、具象的なイメージのようでありながら、抽象的でもあり、意味がありそうでなさそうな形態でもあり、だからこそとても面白く、また、その線がのびのびとしていて自由な感じで、黒色が印象的で懐かしい感じもし、これはとても才能のあるアーティストによる素晴らしい作品だな、と思ったのです。
それ以後、アレシンスキーの作品をパリの美術館で見かける度にみてきて、一時期、私もパリで版画をやっていたので、パリの版画工房や画廊でアレシンスキーの版画を沢山みる機会があり(切手もあるのです)、その時に、詩とコラボレーションしたものや文字との関わりの作品をみて、ますます興味深く思っていました。
私は昔からよく言葉との関わりが深い作品に注目するのですが、自分にも言葉に対する思い入れがあるからかもしれません。 亡父がフランス文学者で、子どもの頃からボードレールやジャン・ジュネの詩やサン・デグジュペリやサルトルについて父が語ることを聞いていた、という事も関係するかもしれません。それに、そういった作家達の詩を実際に私の個展時に私の作品と共に並べた事もあります。父が私の作品にあう詩などを抜粋して選んでくれていたのですが、それは作品をみる人にイメージをより良い方向に広げる役目をしてくれ、とても効果的なコラボレーションだったのです。
そんな事もあり、今回アレシンスキー作品でとりあげたのは、言葉が書かれたハガキや古い手紙を支持体として、その上に描かれているという斬新な表現の作品。
1800年代や1900年初めのアンティークの古いハガキは、蚤の市で手に入れられるのですが、無名の普通の人が出したハガキが売られている、という事実も日本人の方達で知らない人もいるのではないか、と思います。
手紙やハガキだけではなく、書かれた請求書、領収書といったものまで、蚤の市では売られています。 ただ、最近は蚤の市の中でも観光客があまり行かない場所を探さないとありませんが。
アレシンスキーは、フランスの蚤の市で古いハガキや請求書などを束で買ってきた事があり、それに絵を描いているのです。
それは、内容に関係があるような画もあれば、関係なく文字やスタンプや切手を造形としてみて、その形を利用して描かれた作品もあります。
私は以前、サルトルの本に父が線を引いたり文字を書き込んだ部分だけを抜き出してコラージュした作品をつくった事があります。 また古い手紙やハガキにもとても興味があり、蚤の市でよく買っていたので、そのアレシンスキーの作品には何かとても共感するところがあったのです。
蚤の市、というのも、実は私は子ども時代からの思い入れがあります。 母が48〜50年前にパリに滞在していた時にパリの蚤の市に毎週行き買ってきた骨董品が、日本の家に溢れていて、そんな環境で私は生まれ育ったからです。 母からパリの蚤の市の話しを何度も繰り返し聞きながら、ヨーロッパのアンティークをみたり使ったりしながら育ったので、初めてパリの蚤の市に行った時には特別な想いと共に懐かしい感じがしました。
蚤の市に行くと、使われてきた物が沢山売られていて、その使われてきた年月と歴史がその物達の表面にそのまま味わい深くあらわれているのです。

古いハガキというのは、出した人の想い、受け取った人の想いが詰まっているものです。
そんなものを支持体として使い、書かれている文字を意味ではなく造形としてみて、絵を描いたり、コラージュしたりして作品にする、という事はなんて面白いことでしょうか。
その面白さを感じてみてほしい、というのが今回の短期講座を企画した思いです。



Bunkamuraでの初回顧展時に開催された
レクチャー等をスライドで紹介







アレシンスキーの画集
CoBrAコブラ のアーティストをまとめた画集は
今年の4月にパリ市立近代美術館で開催された
カレル・アペルの展覧会で手に入れたもの








左のプチイーゼルにかかっているのが
今回の講座のために私が作成しご用意した支持体
キャンバスに私がパリの蚤の市で買ってきた
アンティークのハガキを拡大したものをはってあります









種類も色々、たくさんご用意しました




色々なハガキや封筒&手紙や請求書など
パリのクリニャンクールの蚤の市で手に入れたもの




私がアレシンスキーの作品をアレンジ模写した作品
手前はその支持体として使用した実際のハガキ



1800年代の昔の請求書は手書き文字も味があります









私がアレンジ模写した作品は
NHK学園くにたちオープンスクールの受付に
説明と共に置いてあります








Photos©︎Uran-AsakoK.
Uran-AsakoK.©droits réservés




0 件のコメント: