デビッド・ホックニー展 ポンピドー・センター David Hockney Centre Pompidou

2017/09/22  少し前になりますが、ポンピドー・センターで開催中のデビッド・ホックニー展 を観てきました。
私にとっては、美術研究所通いをしていた高校生時代に関心を持って作品を研究した(特にデッサンを)思い出深いアーティストの一人です。 現代の具象的な作品としては一番有名ではないでしょうか。何度か日本での展覧会をみた記憶もあり、今回はどんな感じの展覧会になっているのか、みておいた方がいいと思い、行ってきました。

ポンピドーに向かう道中から↓



晴れ渡った空に、サン・ジャックの塔

この塔の説明:
パリの中心・シャトレ広場からリヴォリ通りへ向かって歩くと、不意に異様な塔が見えてきます。 ゴシック・フランボワイヤン様式の美しい塔。
サン・ジャック塔と呼ばれ、もともとサン・ジャック・ドゥ・ラ・ブシュリー教会の鐘楼部分でした。ブシュリーとは肉屋の意味で、この周辺に肉屋が多かったことが名前の由来です。教会は1508年から14年の歳月をかけて造られましたが、フランス革命時に破壊され、あとにこの塔だけが残ったそうです。
その後1836年にパリ市が買い上げ、1850年代に建築家テオドール・バリュによって改築されました。
また教会の存在した中世にはスペインまでのサンティアゴ巡礼路の起点とされていて、教会付属のこの鐘楼は巡礼者たちにとってのランドマーク的存在でした。中世の巡礼者はこの教会からセーヌを渡りサン・ジャック通りを通り、スペインに旅立ちました(当時はパンテオンの辺りがパリの外れでした)。
1998年にサン・ジャックの塔は巡礼路関連遺産として世界遺産に登録されています。




サン・ジャックの塔は、ポンピドーに向かう私のルートでいつも見る塔です。
周辺は錬金術の歴史と密接な関係のある土地でした。 かつてこの塔が一部をなしていたサン・ジャック・ドゥ・ラ・ブシュリー教会の正面玄関は14世紀の錬金術師ニコラ・フラメルによって建設されました。
シュールレアリスムの作家アンドレ・ブルトンはサン・ジャックの塔について「この孤独な、向日葵のような暗鬱さで華麗に立っている」と評しています。




違う日に撮った、夜のサン・ジャックの塔

この塔をみる度に写真を撮っているのです。



さて、この日のポンピドー・センター↓





この青々とした空だと昼間のようですが、この時間ですでに18:00。
閉館が21:00なので、その前にさささっと夕ご飯を食べておいた方がお腹を気にせずゆっくり鑑賞できると思い、ふとみたところ、ファラフェルの文字が。
このポンピドーのすぐ近くに、今までみたことないお店がありました。





マレ地区といえば、ファラフェル FALAFEL。
ここは空いていましたが、メトロ・サン・ポールの方のお店はいつも行列ができるほどの人気で、マレ地区の名物料理です。
ファラフェルというと、ユダヤ人の食べ物と思いがちですが、エジプト、パレスチナ、イスラエル、シリア、レバノン、など中東の料理です。
ファラーフェルとは、”辛きもの全ての母” という意味だそうです。



店内で食べる用メニュー 




バナナいちご、という変わった飲み物がありました。
これがなかなかの味。料理とあいました。



私が注文した、Assiette Mixte  ミックス
私の好きな赤カブや茄子、きゅうりの漬物、ひよこ豆のお団子(ファラフェル)、羊肉のグリルと胡麻ペーストやトマトソースなど乗った盛りだくさんのお皿。
これをピタパン↓に入れていただきます。



ピタパンは、ちゃんと中に具材をたっぷり入れられるように切れ目が入っていて、ホカホカの温かさ。



こちらは、Assiette Poulet au Curry
カレー味の鶏肉の盛り合わせ。こちらもピタパンに入れて頂くのです。

これ、食べてから思いましたが、実は一皿が二人分ではないか、という。。
かなりのボリュームで、ピタパンがお皿からなくなるとさっさとお店の人が補充してくれましたが、2枚食べるのはきつかったです。 テイクアウトの方ではピタパン1枚に具材をたっぷり入れたのが一人分なので、一人1枚が限度ね、と気がつきました。


さて、腹ごなしも済んだことで、いざ会場へ



右側にデビット・ホックニーの垂れ幕



ドランの展覧会もやっているのだな、と思いましたが、時間があと2時間。今回は、ホックニーに集中しよう、と。



ポンピドー・センター、今年2017年で開館40周年。
1977年に開館なのですね。
この建物は猛反対を受けたそうですが、今やこのおかげでマレ地区が復興したようなものですからね。



ポンピドーセンターからの眺め
ちょうど夕陽の時期でした。 
遠くに見えるのがサクレクール寺院。



通路からパリの景色が眺められるこのつくりは良いと思います。
ドームが未来的でもあるイメージ。







ホックニー展は最上階の企画室で開催しています。




ホックニー展の入り口
現在はアメリカで活動する芸術家。




ところで、会場は珍しく、写真撮影が禁止でした。
フランスでは、フラッシュをたかなければどこでも撮影OKなのに、珍しい。
という事で会場風景の写真はないのが残念。

ポンピドー・センターのHP↓


展覧会概要:
今世紀の最も重要な画家の一人に名を連ねる、デビッド・ホックニー。「プール」や「二重のポートレート」「風景」など、ホックニーの有名なモチーフから、近年のiPadなどの最新メディアを使用した作品まで、画家の80年のキャリアを振り返る。
160点余りの絵画、写真、版画、映像、デッサンとともに、ジャン・デュビュッフェ、フランシス・ベーコン、ピカソなど、ホックニーが影響を受けた画家についても考察。
テート・ブリテン、メトロポリタン・ミュージアムとの共同企画。

この展覧会概要にも書いてありますが、ホックニーが影響を受けたというアーティストは、私も影響を受けたと思えるアーティスト達です。 私だけでなく、この時代に生きる美術家の多くは影響を受けた作家達ではないかな、と思います。

それでは、これらのアーティストに影響を受けたというホックニーの作風は、似ているかといえば、あらためてみても、全く似ていない。
ホックニーはホックニーになっていて、背景に微塵も影響を感じさせない、というところがすごいところではないでしょうか。

今回は、デッサン、クロッキーも結構数がありました。
見慣れたものが沢山あり、懐かしいと共にあらためて思ったのは、なんというデッサン力か、という事です。簡単に描いているような線、それが正確に特徴をとらえているのです。
書き込んでいない、1本の細い線だけの、神経質なまでに整理された線。それは、デッサンをやった事のある人なら分かりますが、かなりの難しさなのです。
文字だけだと分かりづらいので、例を以下に。




このデッサンは、ホックニーの母親のポートレートです。
雰囲気がよく出ていると思いますが、近くでみても、1本の線でアウトラインが描かれていて、影などはほとんどありません。
これはよっぽど特徴をとらえられないと描けない線なのです。

他にもホックニーの自画像のデッサンばかりを集めた部屋が印象的でした。自画像が本人の雰囲気がよく出ていて、荒々しく描かれた線の作品もあったのでよかったです。



この作品は、アメリカのコレクター夫妻(Fred and Marcia Weisman) を描いた作品。
サイズ:800x553cm 1968年
このあたりの作品は、だいたいこれぐらいの大きさの作品で、興味深いのはその表現。
ホックニーが描くアメリカのこういう風景は、かなりリアルなのだと思います。
ホックニーがよく描いているプールやポップな色あいは、日本人には馴染みがない感じですが、アメリカではかなりリアルな光景なのではないか。
この作品をみていたら、ヴェネツィアにあるペギー・グッゲンハイム美術館とイメージが重なりました。 あそこは、元コレクターの屋敷でしたから。
この二人の雰囲気も何か物語を感じます。

他にもホックニーの作品は一見グラフィック的で味気なさそうに見えて、みていると物語的というか、ひきこまれる感覚の作品が多かったです。
あらためて魅力を発見した展覧会でした。




これは、会場で買ってきた、ホックニー展の図録。





会場をでた通路から見えた景色
エッフェル塔と左に三日月。








ポンピドー・センターからの景色はいつみても良いものです。


Photos©︎Uran-AsakoK.
Uran-AsakoK.©droits réservés


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