先の投稿ではアーティゾン・ミュージアムのカフェでのランチについて書きましたが、
もちろん目的は展覧会で、石橋財団コレクションと現代美術家とのコラボ企画、ジャム・セッションという面白い企画を観るためで、今回は現代美術家・鴻池朋子さんを迎えたシリーズ第一回となります。
先の投稿にも書きましたが、アーティゾン・ミュージアムとは、元ブリチ”ストン美術館であり、今年初めにリニューアルオープンする際に名称も変わったのです。
名称の意味などは、以下のHPをご覧ください。私も気になって調べました。
この日は久しぶりに、おそるおそる公共交通機関を使いましたが、行きは空いていて座席の間隔を空けての乗車にホッとしましたが、帰りはかなり混んでいて…以前と変わらず通勤ラッシュ! コロナ菌がいなくなったわけでもないのに、なぜJRさんは乗車人数制限など対策をまったくしないのでしょうか。
バッテンマークのプレートを椅子に間隔をあけて貼ったり、夕方の混雑しそうな時間には人数制限するとか、窓をすべて開けっぱなしにするとか、何かしら出来そうなものですが。よく皆さん気にしないで通勤するなあ、と。それに東京の通勤客のこの混雑で、よく今まで感染拡大がないもんだ、と摩訶不思議な気分でした。
アーティゾン美術館は、ネットから日時指定予約制なので、予約した時間に行かなければなりません。そういう意味でも館内は混んでおらずゆっくりとみることが出来ます。
最近はこういった美術館がパリではほとんどで、ルーヴル美術館も一般客は直接行っても入れないので (私はいつでも入れますが)、事前にネット上から予約をして行きます。 コロナ前からIT化しつつありましたが、今回のコロナ禍でこのシステムがどれだけ良いか実感できると思います。
ルイ・ヴィトン財団美術館も、ネット予約していくと、長い行列を横目に、並ばずにスンナリ入れて違いを実感していたものですが、コロナ禍で人数制限をしなければならない現在は、世界的にネットでの入館日時指定予約が当たり前になると思います。
そういう意味でも、今年はじめにリニューアルオープンしたアーティゾン・ミュージアムは行っても安心な場所ではないか、と思っていました。
それに、HPをみると空間設計にも気配りがあり、換気システムや空調も最新のものになっているようなので、23日に再開館した次の日に行くことにしたのです。
行った感想は、結論からいうとすべて思っていたとおり。
入り口では消毒スプレーをして検温もあり館内の空気も気持ちよく、そもそも天井も高く開放感のある広い空間に人がそれほどいないので、のびのびします(笑)
作品についても"百聞は一見に如かず"、写真でみているのと実物では"天と地の差" があります。鴻池朋子さんの作品は、垣根を軽々と超え自由な発想と眼を持っていて、のびやか。
とらわれていない自由な眼、というと何でもあり、と思われがちですが、根底に一筋に貫かれた強い信念があります。
作品についても"百聞は一見に如かず"、写真でみているのと実物では"天と地の差" があります。鴻池朋子さんの作品は、垣根を軽々と超え自由な発想と眼を持っていて、のびやか。
とらわれていない自由な眼、というと何でもあり、と思われがちですが、根底に一筋に貫かれた強い信念があります。
「人間は一匹の動物として一人一人全部違う感覚で世界をとらえ、各々の環世界を通して世界を眺めている。それらは一つとして同じものがない。同じ言葉もない。同じ光もない。」
という鴻池さん自身の言葉が、作品をみる前にはピンとこなかったのですが、みたとたんに実感をともなって伝わってきました。
そして、ダイナミックな表現の中に工夫や仕掛けがあり驚きがあります。
先ほどの言葉は次のように続きます。
「芸術がそのことに腹をくくって誠実に取り組めば、小さな一匹にとって世界は官能に満ち、やがて新たな生態系が動きだす。イリュージョンを言語にすり替えず、日々出会うものたちをしっかりと手探りし、遊び、粛々と自分の仕事をしていこう」
つまり、鴻池さん自身の芸術制作に対する姿勢というものも書かれているわけです。
”やがて新たな生態系が動き出す”、というところは、まさに展覧会場に一歩足を踏み入れた時に感じたことです。
これはただものではないぞ、と思わず心の中で言っていました。
何かとても強いエネルギーとダイナミズムがあるけれども、良い方向を持ったエネルギーであり、プリミティブな形態が持つ世界に近いけれども、確かな表現力の中に批判や主張もあり、鴻池さんの描く竜巻のように、すべてを飲み込んだ竜巻が大きなうずを巻いて迫ってくるようでした。
人間も自然界の中の一部であり、その事を受け入れて自然を尊重しながら共存する事の重要性、は私が今一番共感できる感覚です。
今回のコロナ禍で、特にその事を考えていました。
自然を尊重しない自分勝手な人間の暴力と破壊行為により、自然から仕返しを受けていると思うからです。自然自体は仕返しをしているつもりもないのです。人間の我儘と傲慢が死をもって思い知らされなければならないところまできている、という事です。
コロナ禍にあってまだ終息していない現在、自然の中で暮らす生き物が生き生きと表現され活力に満ち、新たな生態系も生まれている、その中で人間は一人一人が一匹の動物としてその他の生き物や大自然と互いを尊重しながら暮らしていく、そういう事を表現しているように感じるこのような展覧会は多くの人にみてもらいたいと思いました。
【開催概要】
展覧会名:ジャム・セッション 石橋財団コレクション x 鴻池朋子 ちゅうがえり
会期:2020年6月23日(火)ー10月25日(日)
開館時間:10:00 - 18:00 休館日:月曜日
会場:アーティゾン美術館6階展示室
主催:公益財団法人石橋財団アーティゾン美術館
お問い合わせ:03-5777-8600
アクセス:JR東京駅(八重洲中央口)から徒歩5分
東京メトロ銀座線・京橋駅(6、7番出口)から徒歩5分



上に書いた鴻池朋子さんの言葉

これは良いぞ!という感覚でした。
実は鴻池さんの作品を拝見するのは今回初めて。
よって、何の先入観もなくみられました。
芸術作品はネット上や写真でみるのでは分かりません。
実際に現場でみると直に伝わってくるのです。
特に、今回はアーティゾン美術館(ブリチ”ストン美術館)を構成してきた様々な要素と「対話」によるセッションを重ねた、と書かれてあり、その成果が良い形であらわれています。


入り口には竜巻の作品が!
巨大なエネルギーの象徴である竜巻が来場者を迎えます
会場に入るとすぐに舞台装置のような円形の大襖絵のインスタレーションがみえます。
私はこれは後にしてまず壁面・周りからみて行きました。
というのも、これが重要なものであり会場の中心に円形にうずを巻いているので、周りからみていけばここが渦の最終地点じゃないか、と思ったからです(直感的に)
私がみて行った順に写真をのせていきます↓

天井のいたるところに生き物(凧)が飛んでいます

皮トンビ Leather Black Kite 2019
この作品は、ポスターにもなっている「皮トンビ」という作品。
2019年の瀬戸内国際芸術祭への参加作品で、香川県の大島の山に9ヶ月間設置されていた。(元国立ハンセン病療養所のあった場所)
写真と制作風景がカタログに載っていて、リングワンデルングというインスタレーション名がついている。
リングワンデルングとは、悪天候により方向を見失って同じ場所へ戻ってきてしまうという登山用語。
2019年の瀬戸内国際芸術祭への参加作品で、香川県の大島の山に9ヶ月間設置されていた。(元国立ハンセン病療養所のあった場所)
写真と制作風景がカタログに載っていて、リングワンデルングというインスタレーション名がついている。
リングワンデルングとは、悪天候により方向を見失って同じ場所へ戻ってきてしまうという登山用語。
![]() ![]() ![]() ポスターや写真でみるより実物は魅力的。 生き生きしていて迫力があります。 材質感を感じるのもありますが、大きさもあるでしょう。 香川県の大島の山でもみてみたかったです。 ![]() 舞台装置の下にも細かいオブジェが。 ![]() ![]() ![]() 髪の毛がたんぽぽの綿毛 ↑ ![]() ![]() この美術館はフラッシュをたかなければ、写真撮影もOKというところも世界標準でよろしいです。 ![]() 赤熊 2020
この作品は近づいてよくみると↓↓↓
![]()
板に彫刻刀で彫られているのです !!
この熊のなめらかな曲線が彫られた線だとは、近づいてみないとわからない人も多いのでは。 それも板の色を生かして彫られています。 細い線、太い線を駆使して熊の毛の質感まで感じます。 彫刻刀で掘るとクキクキしてなめらかな曲線にならない事が多いというのに。 びっくりしました。 ![]() 向こう側には毛皮のようなものが。。 |

大量の動物の毛皮がぶら下がっています。
掲示されている記事をよむと、害獣駆除で殺された動物とのこと。
北海道にある毛皮のなめし工場から送られてきたもので、
猟師はいてもなめし職人は激減していて、
動物毛皮の多くは廃棄されているとのこと。

昔、子どもの頃に家にあった羊の毛皮の敷物を思い出しました。

昔、子どもの頃に家にあった羊の毛皮の敷物を思い出しました。
母がパリで買ってきた結構な大きさのもので
それを撫でるのが好きでした。
足場の最後にすべり台があり、体育館にあるようなマットレスがひいてあります。
母、無事着地。滑り心地は。。。まあまあ、とのこと。
ちゃんと滑らないで土足のまま歩く人もいるみたいで困りますねえ。
コロナの事もあるので土足で歩くのは厳禁、と書いておいた方がいいのでは。

大襖絵の内側

襖絵 インスタレーション 2020
石、地球断面図、流れ、竜巻、石 が描かれています。


私も一気に滑りましたw


光の効果でどこかの惑星の表面、クレーターみたいで素敵でした。


樹木の精が雲海に浮かんでいるような。
と言いたいところですが、まだまだ続きます。
会場はボリューム満点。
見どころ満載です。
見どころ満載です。
奥:山ジオラマ 2013
石橋財団コレクションの中から
映画がつくられる前の、アニメーションが生まれる前の形で
こんな丸い形のがパリの蚤の市で売っていたのを
思い出しました。

ここでは、4月15日ー5月25日のステイホーム期間中の
東京の音が流れていました。
ーミツバチやウグイス、クマンバチなど
ー雨
ーヘリコプター、シジュウカラ、お隣のピアノ
お隣のピアノ、というのが面白い。
お隣のピアノ、というのが面白い。
この作品は横幅9mもある巨大な壁面で、やはり彫刻刀で彫られています.
ど迫力のカービング技術!! 笑
細い線、太い線を駆使しての曲線の綺麗なこと。
生き生きとしています。
よくここまで綺麗に彫れるもんだと感心しました。
この作品も彫ることでシナベニアの下地が線として浮き上がってきています。
それに、ひとり熊の毛皮をかぶってまるで熊の着ぐるみを着ているような感じで、深い雪の中や水の上を小舟を漕いで進む姿がなんともいえずよかったです。
ボリュームがたっぷりで見応えある展覧会でした。
ポスターやネット上の画像からは想像できない迫力や素晴らしさが会場にはありました。
コロナがまだまだ心配ですが、芸術のパワーをたっぷりもらえます。
5階では「第58回ヴェネツィア・ビエンナーレ国際美術展の日本館展示帰国展」
4階では石橋財団コレクション選「パウル・クレー, 印象派の女性画家たち」展
を同時開催しています。
コロナがまだまだ心配ですが、芸術のパワーをたっぷりもらえます。
5階では「第58回ヴェネツィア・ビエンナーレ国際美術展の日本館展示帰国展」
4階では石橋財団コレクション選「パウル・クレー, 印象派の女性画家たち」展
を同時開催しています。
Photos©︎Uran-AsakoK.
Uran-AsakoK.©droits réservés.
Uran-AsakoK.©droits réservés.
1 件のコメント:
現代美術作家の『鴻池朋子展』ア−ティゾン美術館で観てきました。
ブログの写真がとても綺麗で美しくとれていますね。
作者の”意”とする感覚が明確で。会場での臨場感をかんじました。
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