ボルタンスキー BOLTANSKI  たけしアート☆ビート「ベネチア・ビエンナーレ 2011」

たけしアート☆ビート「ベネチア・ビエンナーレ」を見ました。
ところで、これは「ベネツィア・ビエンナーレ」という題名なので、まさか後半にクリスチャン・ボルタンスキーがあれほどでてくるとは思いもよらないわけで、題名を”ボルタンスキー”にする必要があるんじゃないか、と思います。ベネツィア・ビエンナーレのフランス館の会場の展示作品からパリ市立美術館の作品、音楽院の作品、そしてめったに人をいれないアトリエまで行きあんなに撮影してインタビューしておきながら題名にボルタンスキーとなっていないのは失礼ではないですか!!、NHKに文句を言おうかと思ってしまいました。
最初は日本館に展示しているアーティスト・束芋さんがでてくるのですが、それも興味深い内容でしたが、後半にボルタンスキーがでてくることによって、最初の方の印象がすっかり薄れるぐらいの内容になっていました。
それに、番組中間違っているところがチラホラ、ボルタンスキーが高松宮殿下記念世界文化賞を受賞したのは、去年(2010)なわけはなく、私が文化庁の研修員として、ボルタンスキーのボザールのアトリエに通っていた2006年のことで、第18回目の受賞者・絵画部門の草間彌生と共に彫刻部門での受賞でした。
この時、ボザールのアトリエでボルタンスキー自身から「明後日から日本に行って天皇と食事をするのです」と聞かされ、「それはつまりキーファーが受賞した賞を受賞したという事でしょうか?」と聞きかえしたところ、「そのとおり」と言った会話をしたのをよく憶えています。
受賞したと言わずに、”天皇と食事”、と言ったのがボルタンスキーらしくて面白かったのです。ちょうどボルタンスキーが私の文化庁の研修受け入れ先となってくれてパリに滞在できていたその年に、このような日本からの大きな賞を受賞されて、なんてめでたいのだ、と思い、記念すべき年となっていました。
ちょうどその時(世界文化賞の授賞式に行く前日)に一緒に撮ったツーショット写真がこれです↓↓  私にとっては大事な宝物のような写真の1つです。

パリ・エコール・デ・ボザールのボルタンスキーのアトリエにて。懐かしい画像。この日は新学期になったばかりで50人近くの学生の作品を講評していました。2006年09月撮影

今回のたけしアート☆ビートは、最近のボルタンスキーの映像の中では一番本人の良いところがでているのではないか、と思いました。私が5年前にお会いした時に受けた印象そのままです。日本びいきのボルタンスキーなので、たけし相手に気をゆるしていたのかもしれません。
2010年のグラン・パレでの大規模な展覧会の時に撮影された、artes Editions 「LES VIES POSSIBLES DE CHRISTIAN BOLTANSKI」というDVDを持っていますが、この映像や他のインタビューの映像などを見てもどうも実際にある素朴な良い部分が感じられず、ちょっとがっかりしたので、今回のNHKによる番組はとても良かったと思います。
ボルタンスキーの一日を追う(のみの市での撮影)、や音楽院の地下にある墓地倉庫のような展示場所、アトリエ訪問など、よく取材許可がおりたものだと思うような所を、それも本人自身が乗気で案内しているのですから(それも自然な感じに撮れていて)、驚きと共に貴重な映像です。
久しぶりにボルタンスキーの様子がみれて、その話しの内容も当時聞いていた事がよみがえってきて、感動したのか涙がでてきてしまいました。
たけしもいつもの撮影とは違って最後にボルタンスキーに「色々とヒントをもらった」と深々と御礼を言っていたぐらいですから、他の作家にはない、その言動のもつ意味の大きさ、深さというものを感じたのだと思いました。

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