「セザンヌの肖像画」展 オルセー美術館 パリ「Portraits de Cézanne」Musée d'Orsay Paris

2017/08/27
オルセー美術館で開催中のセザンヌの肖像画を集めた展覧会を観てきました。
以下は展覧会の紹介文とオルセー美術館のHPです↓

『Portraits de Cézanne』
『セザンヌの肖像画』
2017.6.13 - 2017.9.24
オルセー美術館

その画業において、およそ200点の肖像画を描いた、近代絵画の父、ポール・セザンヌ。
なかでも、自画像は26点、妻オルタンス・フィケの肖像画は29点を残した。本展は、「肖像」というひとつのテーマを扱いながらも、多様な解釈を提示したセザンヌの肖像画に焦点を当て、その独自性を明らかにする。彼の作品の最も個人的かつ最も人間味のある側面に接する貴重な機会と言える。

オルセー美術館HP↓
http://www.musee-orsay.fr/



美術館にはいったところのセザンヌ展の案内



オルセー美術館 館内



セザンヌの肖像画展の入口
セザンヌ夫人の肖像画が今回のポスターになっています。
なんともいえない憂いのある表情とブルー色がとても印象的な作品です。


セザンヌは、私が中学生の頃に通っていた絵画教室の先生がセザンヌに傾倒していたので、基礎的なデッサンや着彩(水彩、油彩)を通して、セザンヌの技法と理論を徹底的に学んだことから、私とってはとても関わりが深い芸術家です。
3歳の頃から絵画教室には通っていましたが、美術高校を受験する事もあり、本格的に絵画の基礎をという事で、この先生の絵画教室に中学校1年生の頃から3年間通ったのでした。
この時期に学んだ事は、私の貴重な財産で、造形の基礎となっています。
そんな事もあり、今回のセザンヌの展覧会は観たいというよりは観なければならない、という展覧会であり、肖像画に焦点をあてているという点でもとても興味深い内容でした。
私は、中学生の頃、セザンヌの静物画について(りんごや果物の描き方、抽象的な背景処理の仕方など)集中的に学びましたが、私自身はどちらかというと肖像画、人物を描く方が得意であったので、あれだけ学んだセザンヌの、それも肖像画だけを集めた展覧会、というのならなんとしてでも観たい展覧会だったのです。

観賞後の感想としては、セザンヌが近代絵画の父といわれる理由がわかる内容でした。
まず、今みても、新しい。 古くささが全くなく、新しさを感じます。
いまみてもそうなのだから、1800年代後半の当時としては前衛的であり、かなり先駆的な作品だったでしょう。 だからなかなか理解されなかった。
今回は自画像も多く展示されていたのもよかったです。こんなにまとめてセザンヌの自画像や夫人の肖像がみられる機会はないでしょう。
その画面からは理論だけでは語れないセザンヌの感性と人間性、独自性が感じられる内容となっていました。 
セザンヌ作品は他の誰よりもよく知っていると思っていた私が、”セザンヌ再発見”という感じです。
これだけの肖像画が集まる展覧会は貴重ですから、会期中にもう一度は行っておきたいと思います。






入口通路 奥にはセザンヌ1861年の肖像写真。
セザンヌは1839年生まれなので、22歳の写真。
この写真はパウル・クレーにも似ている感じがします。

1839年、南フランスのエクス=アン=プロヴァンスに、
銀行家の父の下に生まれています。





最初の展示室は、最初期の肖像画の展示





セザンヌ 最初の自画像 1866年
27歳の時
上の肖像写真が撮られた後に制作された自画像
構図が写真とそっくりです。




Louis-Auguste Cézanne, père de l'artiste, lisant L'Evénement(détail).
「レヴェヌマン」紙を読む画家の父
200x120cm 
ナショナル・ギャラリー(ワシントンD.C.)蔵

セザンヌの父・Louis-Auguste Cézanne の肖像画 
1866年作   27歳の時の作品
銀行家であったという父親の雰囲気がでていて、
初期作品の中で好きな作品







妹の肖像   1866-67年
下↓は母の肖像
表と裏に描かれた作品








Portrait d'Archille Empaire 1867-70
28ー31歳ぐらいの作
デッサン力が優れているのが分かる一枚



 


Portrait de l'artiste  自画像 1877年頃
1870年代の印象主義の時代の作品












Madame Cézanne à la jupe rayée   1877
ストライプスカートのマダム・セザンヌ
72x56cm  

この肖像画は、「赤い肘掛け椅子の女性」としても知られています。
Hortense Fiquet(1850-1922)は正式に1886年に
Hortense Cézanne夫人になりました。
作品は1907年にSalon d'Automneの回顧展でセンセーション
を起こしました。







このストライプのスカートの表現の素晴らしさ。
デッサン力と共に色の事を知り尽くしていないと
このような表現はできません。
ずっとみていたくなります。







Portrait de l'artiste au fond rose, 1875
ピンクの背景の自画像
66x55.2cm 
オルセー美術館蔵





自画像を撮る時は、視線をあわせて撮るのがいいです。
セザンヌがじっとこちらをみている感じがしませんか?





会場風景







セザンヌの息子・Paul Cézanneの肖像 1881-82年 
セザンヌが33歳で結婚した1872年生まれ。
10歳ぐらいの肖像。













オリーブ色の壁紙の自画像 1880-1881
33,6 × 26 cm
ナショナル・ギャラリー(ロンドン)蔵
41歳ぐらいの作品









Portrait de l'artiste au chapeau melon, 1885-86
山高帽をかぶった自画像
44.5 × 35.5 cm
ニイ・カールスベルグ・グリプトテク美術館(コペンハーゲン)蔵

この作品は、今回の展覧会で一番語りたい作品です。
なんといってもこの作品で驚くのは、白くチラチラと光を表現している部分は、
下地のまま!!だということです。 
下地というのはキャンバス地(白色)のこと。
背景から洋服、顔、帽子、すべての白色と思える箇所は、下地を残しているのです!!
ただの塗り残しと見せずに、光として、効果的に!

これがどれだけすごい事か、分かるでしょうか?
デッサンの勉強をしたこともある人は分かると思います。
立体感とは、光と影で表現するわけですが、
形を最初に描く段階でこの光の部分がわかっていなければ、
意図的に下地のまま残すことはできません。
デッサン力、造形力がなければできないのです。

この作品では、絵の具の白色を塗り込めず、わざと下地を残すことによって
表面の質感に変化を与え、軽快さをだしています。
白を塗り込んで光を表現すると印象が重くなりがちです。 
その上、筆だけのタッチでは、質感もなく単調になるので、
このように考えたのか、セザンヌの類い稀な才能を感じる作品の一つです。
















この「トランプをする男」の左側の白い部分や服や身体の中にチラチラ
みえる白も下地のままで、光としてつかっています。
絵具を塗り込めるのは簡単ですが、わざわざ下地を残すのは
難しいことです。
すべて絵の具で塗り込まれていない、こういう画面は軽快さがあり、
想像の余地があり、好きです。
そういえば、ピカソの作品でも習作といわれているそういう作品が
あります。
(私には描き残しの習作ではなく完成作品だと思えますが)




セザンヌ夫人の肖像がならんだコーナー
りんごのような表現で描かれた頭部の作品(一番左側)もあります。



Madame Cézanne en bleu, 1886-1887
ブルー色のセザンヌ夫人
74x61cm
ヒューストン美術館蔵

ポスターにもなっている作品で、
モジリアニのような、憂いのある東洋的な
イメージが惹きつけられます。
遠くからでは分かりませんが、近くに寄ってみると、
この作品の洋服の部分の白も、下地をそのまま生かしています。









赤い衣装のセザンヌ夫人の作品が横一列にズラッと並んでいます。
いっぺんにこれだけ見られる機会はそうそうないのでは。

こんな歳ぐらいの小さな子が本物の作品に日常的に接することができる
環境というのは、感性の上で育まれるものが違ってくると思います。




Gustave Geffroy, 1895-1896
ギュスターブ・ジェフロワ
117x89.5cm
オルセー美術館蔵

ギュスターヴ・ジェフロワは、フランスのジャーナリスト、美術批評家、歴史家、小説家、アカデミー・ゴンクールの創設メンバーの一人。
印象派の全容を歴史的に論じた最初の一人であり、親交の深かったクロード・モネの伝記の著者として知られる。
上の作品の一部が下↓ 本の表面の色づかいが素晴らしい。







La femme à la cafetière 1895
女性とコーヒーポット
130 × 97 cm
オルセー美術館蔵




Autoportrait à la palette, 1886-87
パレットをもった自画像
92 × 73 cm
ビュールレ・コレクション(チューリッヒ)

セザンヌ47歳の頃の作品



腕組みをする男  1899
92 × 72.7 cm
ソロモン・R・グッゲンハイム美術館(ニューヨーク)蔵




Le Jardinier Vallier, dit aussi Le Marin. 1902–1906
庭師
107,4 × 74,5 cm
ナショナル・ギャラリー(ワシントンD.C.)蔵 

晩年の作品ですが、いい感じです。




Portrait de l'artiste au béret, 1898-1900
ベレー帽をかぶった自画像
64.1x53.5cm   ボストン美術館(ボストン)蔵

最後の自画像となった作品。61歳頃。
セザンヌは1906年、67歳で肺炎により亡くなっています。
晩年まで南フランスのエクス=アン=プロヴァンスで制作を続け、若い画家たちが次々と彼のもとを訪れました。
その1人、エミール・ベルナールに述べた「自然を円筒、球、円錐によって扱う」という言葉は、後のキュビスムにも影響を与えた言葉として知られています。
私も中学生の頃、このセザンヌの言葉を、実技をしながら実践で学びました。
やはり、こういう事は頭で考えていても何も分かりません。
実際にデッサンなり着彩なり、描きながらどういう事なのか理解していくものです。
絵画、芸術の世界は実践あるのみ。
















オルセー美術館からの眺め




オルセーの象徴である時計窓のあるカフェレストラン




オルセーのショップで買ってきたカタログとハガキ等































Photos©︎Uran-AsakoK.
Uran-AsakoK.©droits réservés

1 件のコメント:

匿名 さんのコメント...

セザンヌ展  いいですね こんなに肖像画を描いていたとは、それも自画像が素晴らしいです。